2017.12.26

『オニ文化コラム』Vol,33

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

2017年最後のオニ文化コラムです。今回は敢えて「消えつつある鬼」について。
2015年2月6日付の福井新聞にこのような記事が出ております。
 
【化け物来襲「子どもかわいそう」 時代の流れで消える伝統行事】
海にすむ化け物に扮した大人が行儀の悪い子をたしなめる福井市越廼地区の伝統行事「あっぽっしゃ」が、少子化の影響で取りやめとなった。
毎年2月6日に行われてきた奇習に「脅されて子どもがかわいそう」と受け入れを拒む家庭も出てきたという。主催する住民グループは「なんとか伝統を守っていこうと続けてきたが、これも時代の流れ。ひと区切りつけたい」としている。
 1963年ごろまで行われていた「あっぽっしゃ」を83年、地元のボランティアサークル「とうだい」の6人が復活させた。以来、地元保育園に張り紙をするなどして受け入れ家庭を募り、対象の3~5歳児がいる20軒程度を回っていたという。
 受け入れ家庭の減少で2006年、中止に追い込まれたものの、「伝統行事がなくなるのは寂しい」との住民の声が上がり翌年に再復活。
地区外から孫を呼ぶなどして続けてきたが、少子化に加えて希望する家庭が減り、12年を最後に行われていない。幼児がいる世帯は現在約10軒という。
 
「あっぽっしゃ」を一言で表現するとしたら「福井のナマハゲ」。秋田県のナマハゲとおなじく、日本的な「春くる鬼(神様)」。ナマハゲと風貌は異なりますが年の変わり目(新年)に集落に訪れる鬼です。その日は地域の若者が扮した赤い顔の鬼「あっぽっしゃ」が、茶釜の蓋を叩きながら「アッポッシャー、アッポッシャー」といって、行儀の悪い子供をたしなめ餅(あっぽ)をもらって帰ります。家にやってきた赤鬼に怯えた子供たちが泣き出してしまう…そんな風景が毎年福井市越廼地区の風物詩でした。時代の流れで消えてしまうとしても、そういう風景があったことを忘れたくない自分です。
 
子供をわざと泣かせる行事は全国に存在します。例えば赤ちゃん同士を泣かせる「泣き相撲」。泣く(=体温が上がりポカポカする)ことで、その子の体の中の魂のエネルギーを活性化させる願いもあるのです。決して悪い存在ではないのだと、これからも言い続けたいと思います。

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか