『オニ文化コラム』Vol,37
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師
新年度が始まりました。本年度もどうぞよろしくお願い致します。
そんな4月、ホッコリする富山県の鬼をば。
『よみがたり 富山のむかし話』(富山県児童文学研究会・編/昭和53年(1978年)初版)に収録されている民話より「鬼をおがんだおばあさん」をご紹介します。
ある村のお婆さんは仏様を拝まず鬼を拝んでおりました。そんなお婆さんが亡くなり、閻魔大王の審査を受けに向かう道すがら鬼に出会います。お婆さんは大喜び。鬼たちも「あ!いつもボクたちを拝んでくれていたお婆さんだっ♪」と大喜び。そんなお婆さんに対し閻魔大王は「生前は神仏を拝まず鬼を拝んでおったな。けしらん!」と地獄に落としてしまいます。
そして地獄での刑が始まるのですが、ことごとく鬼たちがお婆さんを助けます。例えば釜茹での刑ではお婆さん専用の小さな釜でお風呂を用意。お婆さんはお風呂で気持ちよくなり歌まで歌い出しちゃう始末。その歌声に驚いた大王、「これじゃあ刑にならん!針の山に連れていきなさい」と、お婆さんを針の山の刑に。ここでも鬼たちがお婆さんを助けるべく鉄下駄をプレゼント。お婆さんは足を痛めることなく針の山の頂上まで上ります。頂上からは極楽浄土が見えて、その美しさにお婆さん大感激。「このまま針の山に住みたい」と言い出す始末。
閻魔大王は「こりゃ、どの刑をしても地獄にいても意味が無いわ」と諦めて、お婆さんを地獄から極楽浄土に送ることにしました。鬼たちは悲しみました。でも、お婆さんが極楽浄土に向かう階段のところに行くと、その入り口にはお婆さんを見送りに鬼たちが来ておりました。もう一緒に過ごせない悲しさはあるけど、見送りにきたのです。そんな鬼たちに見送られながらお婆さんは極楽浄土に向かうのでした―
という感じのお話です。このお話はTVアニメ「まんが日本むかしばなし」(毎日放送)でも取り上げられまして、昭和63年(1988年)12月3日に「鬼をおがんだおばあさん」というタイトルで放送されております。
おばあさんが鬼を拝んだ理由は語られておりませんが、拝まれた鬼たちとお婆さんの人情味ある交流に私はホッコリします♪鬼も拝まれたら嬉しいんですね♪
山崎 敬子 / Yamazaki keiko
玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長
民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか