2018.6.28

『オニ文化コラム』Vol,39

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

7月間近なこの頃なので七夕にまつわる鬼をご紹介します。
 
七夕と言えば織姫と彦星ではないでしょうか?元ネタは中国由来の牛郎織女(ギュロウシュクジョ)伝説です。が。日本にも元々、棚機津女(タナバタツメ)伝説があります。『古事記』には天稚彦(アメワカヒコ)が死に阿遅鉏高日子根神(アヂスキタカヒコネ)が来た折に詠まれた歌にある「淤登多那婆多」(オトタナバタ)とあり、これがルーツと言われたりします。『日本書記』にも「乙登多奈婆多」という言葉が見受けられます。
 
実はこのアメワカヒコが登場する日本オリジナル七夕伝説があります。『天稚彦草子(あめわかひこそうし)』と言います。そして、ここに鬼が登場します。
 
“あるところに長者が三人の美しい娘を持っていた。ある日、長者の家に蛇がやってきて娘を嫁に寄こせと脅した。長者が娘たちに事情を話すと親思いの末娘だけが了承した。末娘が嫁いだところ、実は蛇はアメワカヒコという美男だった。そして二人は中むつまじく暮らした。
ある日、夫は「ちょいと天上に里帰りしてくる。僕が居ない間この箱は開けないで。地上に戻れなくなるから。もし開けた場合は天上に行くアイテムを使って天上に来て」と言って天上に帰った。その間に、末娘のリッチライフを嫉んだ姉たちが押しかけ、箱を開けてしまった。だから妻はアイテムを使って天上に向かい、星々に道をたずねがら、ついに夫と再会した。が、実は夫の父=義父はなぜか鬼で、この二人の結婚を認めない。それどころか無理難題の試練を妻に突きつけた。ムカデの部屋で寝ろ、千頭の牛を飼え、千穀の米を全部運べ等々・・・これを妻はまわりの助けを得て解決した。そんな妻をついには鬼も認め、二人が「月に1回」逢うことを許した。が!なんと!妻ったら何を聞き間違えたのか「え、年に1回!?」。鬼はシレっと「そう!年に1度。それまでは川で二人を引き離しておくから」と、川を作った。だから二人は天上に居ながらにして年に一度しか会えなくなり、それが7月7日である。“
 
という日本版七夕物語。どうして聞き間違えたんだか・・・そして間違いを訂正しない鬼もオニですね(苦笑)

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか