2018.7.31

『オニ文化コラム』Vol,40

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

夏。様々な霊魂がこの世に戻る時期です。あの世から来る霊魂を迎える「迎え団子」、あの世に戻る霊魂を送る「送り団子」といって白玉ダンゴを作る風習があります。地域差がありますが上新粉の団子です。
 
団子はお葬式の風習にも登場します。「枕団子」と言います。ご飯(枕飯)とともに「死者の供物として用いられ、作法書などにも取り上げられている。また、東京などでは葬祭業者が用意することもある。さらに各地の事例をみると、そのあり様は変化に飛んでいる」(山田慎也「枕団子と死者の想い」国立歴史民俗博物館研究報告第174集/2012)ということで、三方に白紙を敷きそこに枕団子を乗せて供えるのが一般的。「大般涅槃経」にはお釈迦様が亡くなられる時に献上された香飯を辞退したため死後団子を供える事となったとあり、これが起源とも言われますが、はっきりしたことは分かっていません。ただ、一般的には仏教の六道に合わせて6つ作ります。例外としては、例えば鳥取では「死(シ)」に因んで4個の例が。また、佐賀では49個作ります。これは「49日の法要まで毎日一つずつ食べて下さいという意味」が込められているそうです(佐賀の互助会・冠婚葬祭互助会サイトより)。
 
49といえば「四十九日」には「四十九日餅」という風習が見受けられます。仏教では人が亡くなって49日間は中陰(あるいは中有)と言って、魂はこの世とあの世の中間に存在すると考えられています。そして49日目、最後の審判を終えると人は成仏すると言われていることからその日に法事「四十九日」を行い、49か50個の餅を作って亡者の往生を祝います。『福田殖種纂要 (ふくでんじきじゅさんよう。南峯乞士不可停編。10巻。東北大学・成田山仏教図書館など所蔵)』には49の餅は人間の大骨と血肉を表しており、他界に移る死者の魂をこれらの餅で支え助けるのだとあります。また、死者が地獄などに堕ちた時、手足などに釘を打ち込まれるので、この四十九餅を地獄の鬼たちに供えることで死者が苦痛を受けずに済むとも。50個の餅を用意する場合は1個多い理由も。途中で鬼に1個取られてしまう場所があるからなど言われます。
 
地獄の鬼たちもお餅を食べるんですね★

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか