2018.12.26

『オニ文化コラム』Vol,45

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

11月29日、ユネスコ無形文化遺産保護条約政府間委員会において、日本が提案した「来訪神:仮面・仮装の神々」が同無形文化遺産に「記載」されるとの決議がなされました。この「来訪神:仮面・仮装の神々」は,平成23年のユネスコ無形文化遺産保護条約政府間委員会で、「男鹿のナマハゲ」が既に登録されていた「甑島のトシドン」との類似性を指摘されたことを受け、トシドンも加えた国指定重要無形民俗文化財の10件を提案したものです。
 
「来訪神」。正月など年の節目となる日に,仮面・仮装の異形の姿をした者が神として家々を訪れ、新たな年を迎えるに当たって怠け者を戒めたり人々に幸や福をもたらしたりするものです。日本の春(新春・年の変わり目)に来る鬼は古来から日本に訪れてこられた神様です。
 
何はともあれこの結果、①甑島のトシドン(鹿児島県)②男鹿のナマハゲ(秋田県)③能登のアマメハギ(石川県)④宮古島のパーントゥ(沖縄県)⑤遊佐の小正月行事(山形県)⑥米川の水かぶり(宮城県)⑦見島のカセドリ(佐賀県)⑧吉浜のスネカ(岩手県)⑨薩摩硫黄島のメンドン(鹿児島県)⑩悪石島のボゼ(鹿児島県)がユネスコ無形文化遺産として記載されました。
 
勿論、この10件以外の来訪神もおられます。例えば秋田。秋田といえば男鹿のナマハゲが有名ですが、秋田市雄和寺沢地区に伝わる「寺沢の悪魔祓い」(1月15日開催)にヤマハゲという来訪神が登場します。さほど観光化せずに現代に伝わる来訪神さんです。


地域集落の中にある山崎山から下りて訪れるというヤマハゲが登場する「悪魔はらい」。悪魔を払うとは言っておりますが、災いを取り除き地域に豊作がくるように計らってくれる良い存在です。杉の葉と赤唐辛子が付けられた米俵みたいな個性的な顔、ワラで覆われた全身、手には棒や馬そり用の引き金などを持つ姿で「悪魔はらい!」と連呼しながら夜に地域の家々を訪れる姿は確かに妙な迫力があります。ですが、各家家で一通り暴れた後、その家の座敷にチョコンと座って家の主が差し出したお膳(お酒)をいただく姿にはキュンとします。
 
全国には様々な来訪神・春来る鬼がおります。私たちを見守ってくれる鬼たちです♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか