2019.1.25

『オニ文化コラム』Vol,46

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

2019年になりました。元号が変わる本年最初のコラムは熊本県と宮崎県に伝わる鬼八伝説から。
 
まず熊本県の鬼八。
熊本は古くは「阿蘇」と呼ばれておりましたが、その阿蘇開拓の祖として信仰を集めているのが健磐龍命(タケイワタツノミコト。阿蘇神社の祭神。阿蘇大明神とも)。神武天皇の孫神とされる命は、阿蘇開拓のみならず農耕の神として、そして阿蘇火山の自然神としても崇められております。その命の部下に鬼八が登場します。
 
弓の達人でもあった命は、的石(旧・阿蘇町)を的に蛇の尾山から弓を射るのを楽しみ、そのたびに鬼八に矢を取りに行かせました。鬼八は99本目まで頑張ったけど疲れてしまい、100本目の弓を足のつまさきにかけて蹴り返しました。命はその態度に激怒。慌てて逃げる鬼八をつかまえ首を斬ってしまいます。その無念が残った鬼八は祟り神となり、毎年6月の暑い時に霜を降らせ農作物を台無しにしてしまうようになります。それを見た命は鬼八の霊を霜神社に祀りました・・・というお話です。
 
この伝説には補足がありまして、それがちょっと面白い。鬼八が逃げている最中、どうしてそうなったかは分かりませんがオナラを8回プウプウと放ったそうで、その地域は「八屁」から「矢部」の地名となったということです。地名に残る位ですから相当な匂いがしたのでしょうか。
 
話を戻して・・・次は宮崎の鬼八。こちらは神話のふるさと・高千穂に伝わっております。時は神代、高千穂の二上山には鬼八という鬼がいたそうです。彼は地域の美人な鵜之目姫(ウノメヒメ)を奪って鬼ヶ窟に隠していました。そんなある時、初代天皇の神武天皇の兄・三毛入野命(ミケイリノミコト。高千穂神社の祭神)が姫と出会いました。姫は「助けて欲しい」と訴えます。その願いを受け、命は鬼八を退治したのですが、何と一夜にして鬼八は息を吹き返した!それを見た命は再び鬼八を退治して、今度は復活しないように胴・手足・首とバラバラに3ヶ所に分け埋葬した・・・という伝説です。
 
名前や地域の神様に退治される点は同じですが、性格と立場が異なる・・・いつか調べてみたい存在です。
 
オニ文化コラム、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか