『オニ文化コラム』Vol,60
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師
以前、テレビの夕方のお天気コーナーで流れていたこの曲を覚えていますか。
♪ぼくの名前はヤン坊
ぼくの名前はマー坊
2人合わせて ヤンマーだ
君と僕とでヤンマーだ
小さなものから大きなものまで
動かす力だヤンマーディーゼル
これはヤンマーホールディングス(旧・ヤンマーディーゼル)一社提供によるお天気コーナーで流れていた曲です。1959年に開始されて以降、夕方のお茶の間でお馴染みの曲になります。2009年に50周年を迎えるも、放送開始から半世紀以上過ぎ、視聴者の生活も変化してテレビで天気予報を視る人が減ってきたなどの理由から、2014年に放送は終了。この曲もテレビから姿を消しました。
今回はこの曲を作ったヤンマーのお話。同社は1933年、世界で初めてディーゼルエンジンの小型化に成功した会社です。農家に生まれたが故に農作業の辛さを熟知している創業者・山岡孫吉が、農作業をもっと楽にしたい想いで開発しました。現在、世界的に認知されているこのヤンマーの社名に鬼が隠れております。
時は大正、1920年。創業者の山岡氏が石油エンジンを製造した際、トンボが豊作を象徴することから製品商標を「トンボ印」としようとしました。しかし、他企業が既に商標権を取得しており断念。その時、社員からトンボの王様である「オニヤンマ」から「ヤンマ」とする案がでました。日本の古名「アキツシマ」を「蜻蛉(トンボの和名)島」と書く事もあること、また、ヤンマと山岡氏の名前の「ヤマ」をかけようということになり、1921年、商標を「ヤンマー」と定めました(1952年ヤンマーディーゼルに)。
という、このオニヤンマ。鬼蜻蛉と書く日本最大のトンボです。雄の成虫は7cm、雌は8cmほどになります。さらに顎が強い!とはいえ、大きさや顎が名の由来ではなく、「和名は厳しい顔つきと黒白の斑模様から虎の皮の褌を締めた鬼を連想して名づけられたものである(日本産トンボ幼虫・成虫検索図説,東海大学出版会)」とのことです。確かに顔はイカツイ…。
そんなオニヤンマが世界初の小型ディーゼルエンジンを開発した企業の社名に隠れていることも、鬼の文化事例だと思います♪
山崎 敬子 / Yamazaki keiko
玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長
民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか