2017.1.23

『オニ文化コラム』Vol,22

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

新年のご挨拶を申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
1月は新年会などがありお酒(アルコール)を飲むことも多いかと思いますので鬼とアルコールのお話を書かせていただきます。
 
コンビニなどで見かける日本酒の銘柄の1つに「鬼ころし」があるかと思います。例えば、清洲桜醸造さん(愛知)の「清洲城信長 鬼ころし」や」老田酒造店さん(岐阜)の「鬼ころし」、日本盛さん(兵庫)の「鬼ころし」などが有名です。ほかに皇国晴酒造さん(富山)の「越中鬼ころし」、北雪酒造さん(新潟)の「北雪佐渡の鬼ころし」など・・・全国に「鬼ころし」の名が付く日本酒があるようです。
 
鬼を殺す酒って何?という疑問が出る人もいらっしゃるかもしれません。「鬼ころし」の名がつくお酒を最初に造ったと言われる老田酒造店さんのホームページには『“鬼をころすような”辛口の酒は、「飛騨の老田の鬼ころし」として、今日に至るまで親しまれてきました。』と記されております。

「鬼を殺すような」ということで。ちょっと目線を変えてみますと、確かに鬼退治でお酒が使われた例があります。

南北朝時代には成立していたと思われる伝説『酒呑童子伝説』。酒呑童子が描かれた最古の作品は14世紀成立の「香取本大江山絵詞」(逸翁美術館所蔵・国宝)です。その後、謡曲「大江山」が出て、江戸時代に刊行された「御伽草子」に紹介されたことで一気に全国区の伝説になりました。
 
内容はずばり、鬼(酒呑童子たち)の鬼退治。彼らを退治する時に用いたのがお酒です。「神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)」といいます。
鬼退治にあり、リーダーの源頼光、藤原保昌並びに四天王(坂田公時、渡辺綱、ト部季武、碓井貞光)ら6名頼光ら一行は山伏姿に身をやつし、道中、翁に化けた住吉・八幡・熊野の神々から「神便鬼毒酒」を与えられて、退治に臨みます。
で、このお酒で酔いつぶれた鬼たちを退治しました。まさに「鬼ころし」!!
辛口だったかどうかは分かりませんが、文字とおり「毒酒」だったと思いますので、こちらは商品化できそうにないですね(汗)
 
今回は、鬼退治とお酒のお話でした♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか