2015.5.21

『オニ文化コラム』Vol,2

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術楽部講師

「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。

鬼については多くの研究者が様々な見解を出されておりますが、「おに」という言葉の語源について書かれた最も古いものは、平安中期に確立したとされる日本最初の百科辞典『和名類聚抄』だと言われています。ここには「鬼和名於爾 或説云、隠字音於爾訛也、鬼物隠而不欲顕形、故俗曰隠也」と書かれております。つまり姿が隠れている「隠(おん)」が転じて「鬼(おに)」になった・・・ということですが、この説に対しても色々の指摘がされてきました。 では単語としてはいつ頃から文献に出ているかというと、『日本書紀』の欽明5年(544)に「粛慎人(みしはせのひと)」に対して「彼の嶋の人、人に非ずと言す。亦(また)鬼魅なりと言して、敢て近づかず。」「人有りて占へて曰く、この邑の人、必ず魅鬼の為に迷惑はされむ。」という表現をしており、「鬼魅」「魅鬼」という単語で登場しています。どうやら、この場合は得体の知れない隠れた存在というより、外敵(人)を指しているようです。 このほか、斉明天皇の葬儀の際の記述では朝倉山の上に「鬼有て、大笠を着て、喪の儀を臨み視る。」とあります。大笠を着た異形の何かが山の上から覗き見ている・・・これは朝倉山の神さまのことではないかとも言われています。 この2つの例をみても分かるように、「鬼」って何?と言われると、じつは正体が1つではないのです。その後、仏教が伝来し、仏教の「鬼」も日本に広がりますのでさらに単語の意味が複雑化してまいります。

鬼ごっこの「鬼」という単語から日本の古代が垣間見れる・・・これもまたひとつの鬼ロマンだと思いませんか?

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長


民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか