『オニ文化コラム』Vol,24
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師
3月もあと少しですが皆様いかがお過ごしでしょうか?今回も3月の鬼をご紹介します。
兵庫県姫路市の魚吹(うすき)八幡神社(別名「津の宮」)では、3月25日に「武神祭(ぶじんさい)」という祭礼を行います。別名『津の宮鬼追い(おにおい)』。この祭礼は姫路市指定民俗重要文化財に指定されています。
ということで「武神祭」の中身について。
神社のホームページによると、
「天平宝字八年(私註:764年)甲辰三月七日、支那福州の賊軍が、播磨国揖保郡福井庄家島に攻めてきたので、朝廷(47代淳仁天皇)は、播磨国の国司、太田庄住人冶部郷、藤原朝富臣貞国に討伐の命令を出された。これを受けた貞国は、当社(魚吹八幡神社)に詣で、勝利の祈願をして家島に向かい勝利する。
このおり、祈願は七日間行われた。これは、瑞垣の内に祭壇を設けて五色の和幣(にぎみてぐら)をたて、剣、弓、矢を飾り勝利を祈ったところ、最後の日に境内がゆり動き、巽(北西)方向から霊雲が起こり五色の和幣が、五色の鬼となって南の敵船に向かった。(その後陰陽の鬼面が残っていたので、これを当神社の神宝とした。)
この時、大風が吹いて、賊船を七百三十二隻沈没させ、大いに勝利する。帝は喜ばれ、貞国に播磨五郡を与えられる。貞国は、祈願成就の礼として三千石を当社に奉納した。翌、天平神護元年(私註:765年)春三月七日、この縁により初めて「鬼神祭」を行った。」
と、あります。
祭礼では敵船732隻の敵船を沈めた鬼神を再現した鬼舞が本殿などで行われます。登場する鬼は故事に則って5鬼。大鉾を持ち腰に刀を差す赤鬼と青鬼の「再来子(さいらいし)」、たいまつを持ち腰に刀を差す赤鬼「善界(ぜんかい)」、たいまつを握り大槌を腰に差す親鬼(赤鬼)と鉾を持つ親鬼(青鬼)の5鬼が鬼舞を披露しますこの鬼の舞は神主とは別の「社家」が行うものと定められています。現在も、宮内に社家として七家があり、この伝統をしっかり引き継いでおられます。
彼らが舞い終えた後、神社にお供えされた餅で餅まきをして、祭は終わります。
神様が鬼の姿で現れて人々を守ったことに感謝するお祭があるよ、というお話でした。
さあ、いよいよ新年度!
山崎 敬子 / Yamazaki keiko
玉川大学 芸術学部講師
早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長
民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか