2017.8.25

『鬼ごっこのまち物語り』Vol,19

 
中島 智
羽衣国際大学 現代社会学部 講師

8月下旬から9月上旬にかけては、子どもの自殺が多い時期である。改めていうまでもなく、学校でのいじめ問題がテレビや新聞でたびたび報道され、自殺をはかる子どもたちが後を絶たない。自殺もいじめも人間社会には無くならない話だといって切り捨てることは簡単だが、しかし小中高校生の自殺の人数が例年、年間300人前後で減っていないという実態に心を痛めない大人はいないだろう。
 
子どもの問題は大人社会の縮図である。いじめや自殺それ自体も大きな問題だが、何よりも気になるのは、ギスギスした不寛容な社会の空気だ。日本社会を覆う効率主義や同調圧力にのみこまれずに、安全に楽しくコミュニケーションをとるためにはどうすべきか。まずは、安心して素の自分でいられる場所が必要であるが、そんな「心の居場所」を子どもも大人も見つけられなくなっている。とすれば、各自の存在価値を確かめあい、自分にも他者にも寛容でいられるような居場所を育てることが課題となるだろう。
 
学校の夏休みもおわる8月末、関西では地蔵盆のシーズンだ。子どもが主役の行事で、数珠まわしをしたり、お菓子をもらったり…子どもたちの喜ぶ姿を嬉しそうに眺めている大人たちの顔も含め、町内が何となく無礼講のような雰囲気を呈するひとときだったことを憶えている。子どもの元気な声や明るい笑顔は未来へのエネルギーそのものである。それを守るためにどんなことができるだろうか。
 
地蔵盆もそうだし、ごく当たり前のことではあるが、地域ぐるみで子どもを見守り、異世代交流を進めていく機会を意識的につくっていくべきだと思う。楽しみながら心身をリフレッシュできるスポーツを通した居場所づくりも有効であろう。伝承の力に裏打ちされた鬼ごっこもそのひとつであり、家族や地域をつないできた遊び文化の再創造をめざしたい。今こそ大人の出番だ。

中島 智 / Nakajima Tomo

羽衣国際大学 現代社会学部 講師


1981年滋賀県生まれ。専攻・関心分野:観光学・地域文化政策・子ども文化論・福祉文化学。東京立正短期大学現代コミュニケーション学科専任講師を経て、羽衣国際大学現代社会学部専任講師(大正大学人間学部非常勤講師を兼務)。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共編著に『新・観光を学ぶ』(八千代出版、2017年)。共著に『こども文化・ビジネスを学ぶ』(八千代出版、2016年)など。
<その他、所属>
一般社団法人東京スポーツクロスラボ 監事