2016.1.28

『鬼ごっこのまち物語り』Vol,9

 
中島 智
羽衣国際大学 現代社会学部 講師

20~30歳代若年層は、地域活動への参加に消極的だという偏見が一部にあるかもしれない(その多くは、後継者となり得る若者が参加してくれないことを嘆く声……)。だが、そんな先入観はスポーツ鬼ごっこの広がりを見ればどこかにふっとんでしまう。鬼ごっこを通して地域で多世代のつながりを紡いでいる若者・現役世代の仲間と数多く出会ってきた私は、そう確信している。

 実際、そのことを裏付けるデータも鬼ごっこ協会から公表された。2015年12月3日現在のライセンス取得者(1159名)の年齢構成(図1)を見ると、30歳代が29%でトップ、20歳代が24%で続いている。一般に、地域活動で参加率が低いとされる若年層の割合が最も高い。一方、ライセンス取得者の所属先(図2)は、会社員が20%でトップ、会社役員・自営業が17%で続き、逆に地域活動との接点が強いと思われるNPO(スポーツ以外)は3%。ここに、従来の地域活動に風穴をあけるヒントを一定読み取ることができるのではないだろうか。
図1
 
図2
 「スポーツ振興法」(1961年施行)を全面的に改正し2011年に成立した「スポーツ基本法」には、「スポーツは、人と人との交流及び地域と地域との交流を促進し、地域の一体感や活力を醸成するものであり、人間関係の希薄化等の問題を抱える地域社会の再生に寄与するものである」とある。まさにスポーツ鬼ごっこがめざす地域振興の姿と重なる。ただその際、若者世代が地域に求めているのは、かたい組織や計画ありきの活動ではない。むしろ、ゆるいつながりであり、そこから何かが生まれるプロセスであり、物語である。

 「人と人との交流」については、これまでにもこのコラムのなかで少し触れてきたが、私は「地域と地域との交流」が気になる。国内のライセンス取得者の増加からも分かるように、おそらくスポーツ鬼ごっこは、実践を広める時期から各地域の仲間をつなぐプラットホームづくりの時期に入りつつある。各地の“スポ鬼”コミュニティが集い、気づきをシェアしながら関係性をデザインしていくことで、どんな新しい遊び方や生き方が生まれてくるのだろうか。
どうやら今年も鬼ごっこから目が離せなさそうだ。

中島 智 / Nakajima Tomo

羽衣国際大学 現代社会学部 准教授


1981年滋賀県生まれ。専攻・関心分野:観光学・地域文化政策・子ども文化論・福祉文化学。東京立正短期大学現代コミュニケーション学科専任講師を経て、羽衣国際大学現代社会学部専任講師(京都文教大学総合社会学部非常勤講師を兼務)。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共編著に『新・観光を学ぶ』(八千代出版、2017年)。共著に『こども文化・ビジネスを学ぶ』(八千代出版、2016年)など。
<その他、所属>
一般社団法人東京スポーツクロスラボ 監事