2015.5.28

『鬼ごっこのまち物語り』Vol,2

 
中島 智
羽衣国際大学 現代社会学部 講師

つい先日も、学生たちとスポーツ鬼ごっこを楽しんだ。短大で担当しているボランティアの授業では、鬼ごっこ協会のスタッフの方をゲスト講師にお迎えし、「鬼ごっこのある町づくり」を体験学習している。今年は地元小学校PTAのお母様方も見学に来られ、善福寺川のそばで初夏の風を浴びながらの地域交流授業とあいなったのである。

 始まって驚いた。学生たちとお母様方とは初対面であったが、相手の動きをよく見て、声を掛け合う。普段は目を合わすことさえ苦手な人見知りの学生も、一瞬にして打ち解けて、見事なチームプレイを見せてくれたのである。どうやら鬼ごっこには、初対面でも見ず知らずの人でも、あたかも魔法のように私たちを瞬時につなげる力があるらしい。かくいう私も、この不思議な力の恩恵に与って多くの人々と出会うことができた一人だ。昨年まで縁もゆかりもなかった東京で。
 
 近年注目されるようになった社会学の用語に、「ウィーク・タイズ」というのがある。地縁や血縁、社縁(死語?)のような強い絆ではなく、自分とは異なる状況にある人との弱いつながりのことを指している。このウィーク・タイズのつくり方を、スポーツ鬼ごっこは教えてくれているのではないか。それともう一つ。学生たちの動きを見ながら感じたのは、相手やチームからの求めに応答(response)していける身体を鍛えているということ。そこでは、自分が今何を求められているのか、その場で判断して行動していく当事者意識が求められるからである。

 「鬼ごっこのある町づくり」とは、しがらみのコミュニティをつくることではない。重要なのは、仲良しクラブをつくることではなく、いつもは顔を合わせない人々とゆるやかにつながり、信頼のおけるコミュニティを生み出すこと。たとえばそれは、たまたま隣に居合わせた人とにこやかに語り合うことから始まる。きっとそこには、ふと思いついたことを口にできる自由があり、相手の思いに応答していける力(response-ability)という意味での、責任があるだろう。

中島 智 / Nakajima Tomo

羽衣国際大学 現代社会学部 准教授


1981年滋賀県生まれ。専攻・関心分野:観光学・地域文化政策・子ども文化論・福祉文化学。東京立正短期大学現代コミュニケーション学科専任講師を経て、羽衣国際大学現代社会学部専任講師(京都文教大学総合社会学部非常勤講師を兼務)。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共編著に『新・観光を学ぶ』(八千代出版、2017年)。共著に『こども文化・ビジネスを学ぶ』(八千代出版、2016年)など。
<その他、所属>
一般社団法人東京スポーツクロスラボ 監事