2016.10.6

『よく食べ・よく遊び・よく〇〇する』Vol,4

 
若木 均
わかきkids'クリニック院長
日本体育協会公認スポーツドクター

貧血と食事
 
体は、食べたもので作られていきます。そして、スポーツに必要なからだ作りを考える際には、運動(トレーニング)だけではなく、食事(栄養)と休息を含むこの3つの要素が重要です。
 
今回は、スポーツと貧血についてお話ししたいと思います。
 
スポーツ選手に限らず、最も多くみられる貧血は鉄欠乏性貧血というものです。体内の鉄分の多くは、血液を構成する成分のひとつである赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質として存在し、酸素を運搬する役割を担っています。スポーツ鬼ごっこでは、瞬発系と持久系と両方の走力が必要とされますが、この場合主に持久系(有酸素運動)への役割が大きくなります。持久系の運動の際、そのエネルギーは、血中のブドウ糖や筋肉に含まれるグリコーゲン、脂肪を燃焼させることで産生されますが、この燃焼の際に酸素が必要になります。つまり、ヘモグロビンが多い方が酸素の運搬を効率よく行え、持久力のアップにつながるといえます。鉄分の不足はヘモグロビン濃度の低下につながり、持久系の運動を考えた際には結果として持久力の低下を招きます。鉄分をしっかり摂る必要性が理解できますね。
 
それでは、どんな食材に鉄は多く含まれているのでしょうか。
例としては、牛肉、マグロ・カツオといった赤身のさかな、レバー、あさり・しじみといった貝類、ひじきや小松菜などが挙げられます。
また鉄分の吸収を助けるビタミンCを一緒に摂ると効果的です。
サプリメントについては補助として利用することが勧められます。やはり食餌から鉄分も含めた栄養素を十分に摂取することが大切ですが、スポーツ選手のように運動により損失する鉄分(栄養素)が多く、食餌からだけでは不足してしまう場合にはサプリメントを活用することが勧められています。
 
スポーツに関連する貧血としては、運動性溶血性貧血が挙げられます。これは足裏の衝撃により赤血球が壊れやすくなることで起こる貧血です。赤血球の寿命は約120日で骨髄で作られることで一定の状態が保たれていますが、激しい運動により溶血が造血を上回ってしまうとこの貧血になってしまいます。競技としてはマラソンや駅伝といった長距離走、サッカー、バレーボール、バスケットボール、剣道といったものが挙げられます。足裏の衝撃吸収を目的としたクッション性の高いインソールを利用することもよいかもしれません。
 
またスポーツとの関連ではありませんが、胃潰瘍の発生とも関連のあるヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)に感染している場合にも貧血が起こることがあります。これは胃に感染したピロリ菌が消化管からの鉄の吸収を阻害したり、ピロリ菌が増殖する際に鉄を消費するために鉄欠乏をきたすことが判明しています。
以前病院勤務をしていたときに、この貧血のお子さんに遭遇しました。運動部の中学生で強い貧血を認めたため運動との関連も考えたのですが、いくつかの検査の結果ピロリ菌による貧血と診断され、治療(除菌)により速やかに貧血の改善をみました。
 
貧血とスポーツ、食事の関係、少し理解が深まりましたでしょうか。

若木 均 / Wakaki Hitoshi

わかきkids'クリニック 院長
日本体育協会公認スポーツドクター


平成9年 浜松医科大学卒業
平成9年 慶應義塾大学病院小児科学教室
*慶應義塾大学病院勤務時に、こどもの城体育事業部で短期研修。
平成15年~ 横浜市立市民病院小児科
目黒通りこどもクリニック 院長
現在 わかきkids'クリニック 院長
小児科専門医
日本体育協会公認スポーツドクター(平成23年~)