『鬼ごっこのまち物語り』Vol,11
2016年3月25日(金)
中島 智
東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師
鬼ごっこは、遊びの王様といわれるが、たしかに最近のスポーツ鬼ごっこの普及は、王様の地位を不動にしている印象を受ける。笹川スポーツ財団が公表したデータを見ても、4~9歳の子どもたちが過去1年間によく行った運動・スポーツ種目の上位に「おにごっこ」がランクインしているが、ここ数年での実施率の伸びが顕著である。私たちの社会に鬼ごっこができる時間と空間、それに仲間がいればいうことはない。
そのことを強く感じたのは、先日(3月19日)品川中小企業センターで開かれた第5回鬼ごっこサミットに出席したときである。昨年には、ONIリーグというスポーツ鬼ごっこの公式リーグも発足し、スポーツ競技としての魅力も徐々に知られるようになってきたことは、いうまでもないだろう。
それだけではない。「何もない」と思われがちな地域における地域づくり、子どもたちに身体の扱い方を教える活動や学校間を越えた学生の交流など、各地で実にさまざまな形でスポーツ鬼ごっこに取り組む仲間たちが報告し対話した。こういった地域での地道な活動があっての鬼ごっこ人気なのだろう。
子どもの世界では、遊びをめぐる「サンマ」(時“間”・空“間”・仲“間”)の欠如がいわれて久しいが、私は鬼ごっこのある町づくりの活動にその再生のヒントを得た思いがした。誤解を恐れずにいえば、ワークライフバランスなど余暇の制度改革を唱える前に、鬼ごっこをする機会(時間)をつくる方が早いのではないだろうか。鬼ごっこの再評価はまた、それで遊ぶのにふさわしい町(空間)を要求するだろう。画一的でおもしろみに欠ける町並みをバージョンアップさせるもの、それが鬼ゴッター(鬼ごっこを愛し広めていく仲間)である。
プロフィール
中島 智 Nakajima Tomo
東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師。
1981年滋賀県生まれ。文化政策・観光学を専攻し、地域文化と観光などに関する教育・研究に取り組む。暮らしを誇れる地域の実現をめざし、すぎなみ地域大学(杉並区)などでも活動中。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共著に『観光を学ぶ』(八千代出版、2015年)、『観光文化と地元学』(古今書院、2011年)など。
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