『鬼ごっこのまち物語り』Vol,14

2016年7月27日(水)
中島 智
東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師
先日の参議院選挙から18歳選挙権が実現した。若い世代が政治を意識し、社会について話しあう機会が増えつつある。ただ、強いリーダーを期待して立候補者任せになってはいけないし、ましてや、投票は人気投票ではない。選挙や政治というと、天下国家というか外交安全保障のような大きな問題を意識しがちかもしれない。しかし同時に、身近な地域にも問題は山積している。


 では、その地域の課題を解決するのはだれか。指導力のある政治家か、それとも優秀な官僚か、カリスマプロデューサーか。そうではないだろう。その地域の課題を解決するのは、まずはそこに暮らす生活者一人ひとり。そんなパブリック・マインドを忘れてはならない。むろん、各人の有する専門スキルは地域づくりを後押しする。だが、そもそも、だれもが参加し、個性を活かしあい、共有できる価値を創造していく協働作業こそ地域づくりの醍醐味だ。その意味でリーダーシップというよりも、むしろフォロワーシップが大切になってくる。そう、フォロワーシップを鍛えるのが鬼ごっこのひとつの重要な役割ではないか。そんなことを考えていたとき、宮本常一の本を読んでいたら、タメオニについて書かれた次のくだりに出合った。


 「この時も一種の道義があって、小さいものはなるべく初めにとらえないようにした、もしそういうことをすると、その者を皆でなじった。小さい子どもが初めての鬼になると、大きな子供がわざととらえてもらって鬼になり他の者をとらえにかかる。こういうことは一種の不文律になっていた」(宮本常一『著作集6家郷の訓・愛情は子供と共に』未來社、1967年、107頁)


 子どもたち同士が遊ぶことで、集団のなかでのふるまいや人間関係、広い意味での生き方を学んでいたということだろう。遊びは、学びの原点であったのだ。18歳選挙権を若者の地域参加とあわせてうまく機能させるためにも、学びの原点としての遊び、すなわち鬼ごっこを今後も期待を込めて見つめていきたい。

プロフィール

中島 智 Nakajima Tomo

東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師。
1981年滋賀県生まれ。文化政策・観光学を専攻し、地域文化と観光などに関する教育・研究に取り組む。暮らしを誇れる地域の実現をめざし、すぎなみ地域大学(杉並区)などでも活動中。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共著に『観光を学ぶ』(八千代出版、2015年)、『観光文化と地元学』(古今書院、2011年)など。

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