『鬼ごっこのまち物語り』Vol,6

2015年9月18日(金)
中島 智
東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師


 2015年9月10日未明、栃木県に大雨特別警報が発令された(後に茨城県にも)。50年に一度といわれる大雨(線状降水帯)は鬼怒川を決壊させ、さらに東北地方にまで被害を拡大させていった。この場をお借りして、今回の東日本豪雨で被災された方々に心からお見舞い申し上げたい。


 奇しくも当日、私は教員になって初めてのゼミ合宿で日光市(東武日光駅近く)にいた。前日の午後に到着し、日光山輪王寺をお参りした。雨で滑りやすくなっていた石段を下りていると、目の前に白い蛇が出てきて境内の森に消えた。そして傍の水路に濁った水が大量に流れているのを見て、危険を感じた。関東で初の特別警報が出たとあっては、当初の予定を変更せざるを得ない。10日、鉄道はほとんど運休していたが、通行止めの国道を迂回する代行バスを利用するなどして、その日のうちに何とか東京に戻ることができた。


 自宅に着くと気が抜けた。翌朝、学校の同僚に無事を報告した。夕方、あるコミュニティバーに行き、集う人たちと語り合った。そこは家でも職場・学校でもない「第三の場」(サードプレイス)で、思いもよらぬ出会いがある。その日は、保育園に通う女の子が、バナナ鬼の流行っていることを、母親をはじめとする周りの大人に話していた。大人の方は、氷鬼は知っているけれど、「バナナ鬼って何?」ということで、その子どもに教えを乞う形となった。子どもの遊び文化である鬼ごっこの本質は、まさに、この文化の担い手としての子どもの姿の中に見ることができるではなかろうか。


 そして鬼ごっこは、子どもにとって家庭や学校が時としてそうなりがちなように、保護や教育の対象として特別扱いされることなく、人にもまれて社会性を育む場でもある。いつもは顔を合わせない人ともゆるやかにつながり、リラックスして対話をする。鬼ごっこをすることは、どこか第三の場に似た営みなのである。鬼ごっこのある町づくりを、「信頼のおけるコミュニティづくり」と私は考えているが、もちろんそれは子どもだけに限らない。大人もしかり、あるいは鬼ごっこを通して、子どもと大人の関係を組み立て直すことも、チャレンジすべきテーマだろう。

プロフィール

中島 智 Nakajima Tomo

東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師。
1981年滋賀県生まれ。文化政策・観光学を専攻し、地域文化と観光などに関する教育・研究に取り組む。暮らしを誇れる地域の実現をめざし、すぎなみ地域大学(杉並区)などでも活動中。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共著に『観光を学ぶ』(八千代出版、2015年)、『観光文化と地元学』(古今書院、2011年)など。

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