『鬼ごっこのまち物語り』Vol,7

2015年11月9日(月)
中島 智
東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師


 「第4回スポーツ鬼ごっこ全国大会in八王子」(11月23日)を控えて繰り返そう。
「鬼ごっこ」がスポーツになった。
伝承遊びの鬼ごっこが、今やさまざまな分野において再評価され、各地域で工夫をこらして実践されている。こうした動きを主導しているのが「スポーツ鬼ごっこ」である。


 先日、10月10日・11日に行われた「スポーツ博覧会・東京2015」(主催:東京都、公益財団法人東京都スポーツ文化事業団)でも多摩中央公園で体験プログラムが実施された。私も誘われてスタッフとして参加、今年に入って取得した3級ライセンスを活かす機会になった。11日の午前中は小雨が降っていたが、午後になると日が差し、400人以上の親子がつめかけた。なかには経験者もいたが、大半はビギナー。「昨日楽しかったから今日も」という小学生や、“見よう見まね”でルールを覚えながら何度も挑戦する幼児も。


 なぜ、スポーツ鬼ごっこがこうも注目されるのか。まず思い浮かぶのは、老若男女を問わず気軽に参加できるということ。自分の運動能力を気にすることなく、「身体を動かしたい」という欲求を満たすことができ、運動に苦手意識がある人も楽しめる。また、スポーツを“する人”・“見る人”だけではなく、“支える人”として参加できる窓が用意されている点も強みだ。ライセンス制度もその一つ。スポーツ鬼ごっこは、人づくりの効果を秘めているが、指導員や審判員として支える人の成長も期待できる。鬼ごっこの理念をどう伝え、楽しんでもらうか。たとえばチーム名をつけ、作戦について話し合う。ルールを説明し、時にはその場にいるメンバーの個性にあわせて工夫する。問われているのは、「この指とまれ」式参加を見守りつつ、いかに心に火をつけ、意欲を引き出していくかである。


 ところで、最近、学校教育界で流行しているアクティブ・ラーニング(能動的学習)は、手法の導入そのものが目的化しているように見えなくもないが、当然その本義も、子どもたちの意欲の醸成にある。とすれば、スポーツ鬼ごっこに学ぶべきことは多いだろう。それは、誰かにお任せするのでなく、自分たちが本当にしたいと思うことを話し合い、判断して行動する習慣を育むからである。

プロフィール

中島 智 Nakajima Tomo

東京立正短期大学現代コミュニケーション学科講師。
1981年滋賀県生まれ。文化政策・観光学を専攻し、地域文化と観光などに関する教育・研究に取り組む。暮らしを誇れる地域の実現をめざし、すぎなみ地域大学(杉並区)などでも活動中。「知る前に感じる」「動きながら考える」「遊ぶように生きる」ことを学生たちと実践している。共著に『観光を学ぶ』(八千代出版、2015年)、『観光文化と地元学』(古今書院、2011年)など。

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