『オニ文化コラム』Vol,8

2015年11月27日(金)
コラムニスト 山崎 敬子(玉川大学芸術学部講師)




すっかり秋深く・・・いえ、冬が見えてまいりました。11月は霜月とも言いますが、霜月に行われる神楽では鬼が登場することがあります。


が、それについてお話しようとしていたら、テレビから鬼の声が聞こえてきました。昔話をモチーフにしたテレビCMに登場するヤンチャな鬼の声が。


有名な昔話に「桃太郎」があります。桃から生まれた桃太郎がお婆さんから黍団子(きびだんご)を貰って、イヌ、サル、キジを従えて、鬼ヶ島まで鬼を退治しに行く物語です。鬼退治の伝説は全国各地にあるのですが、昨今一番有名なのは岡山県かもしれません。「黍団子」と、吉備(岡山)で江戸時代からの土産品とも伝わる餅菓子「吉備団子」が合体した結果でもあるのですが、もともと、岡山や香川に鬼伝説があったからこその認知度です。さらに言えば、鬼退治伝説は他の地域にもありますので、今回は長崎県壱岐島に伝わる鬼退治伝説をご紹介いたします。


壱岐には「百合若大臣(ゆりわかだいじん)の鬼退治伝説」が伝わっております。ざっくり紹介しますと、昔、壱岐は鬼が沢山住む島「鬼ヶ島」とも言われおり、島内では鬼が島民を苦しめておりました。その悪行を見かねた豊後国(大分)の若武者・百合若大臣が鬼退治をせんと上陸し、鬼退治を開始します。最後には、鬼の大将である「悪毒王(あくどくおう)」と対峙し、激戦の末に悪毒王の首を切り落として勝利。その時、悪区毒王の首が空中に舞い上がり、百合若大臣の兜に噛み付いたまま死にました・・・というような伝説です。


さらに、壱岐には、鬼退治伝説だけではなく、鬼が住んでいたとされる遺跡も伝わっております。例えば鶴亀鬼屋(つるきおにや)古墳や鬼屋窪(おにやくぼ)古墳。前者は民俗学研究で有名な折口信夫先生の「鬼の話」にも登場する遺跡です(参照/「折口信夫全集 3」中央公論社 1995(平成7)年4月)。まさに鬼ヶ島。


そんな壱岐ですが、悪毒王が噛み付いた兜をつけた百合若さんの姿をモチーフにした民芸品「鬼凧(おんだこ)」というのもあります。もし壱岐に行かれることがありましたら、是非この鬼凧をお土産などにいかがでしょうか。魔除けになるそうですよ。


今回は、鬼退治伝説についてお話させていただきました。来月は、春に来る鬼についてなど・・・。

プロフィール

山崎 敬子 Yamazaki keiko

玉川大学芸術学部で民俗芸能の講師
早稲田大学メディア文化研究所で招聘研究員
小田原のまちづくり会社「合同会社まち元気小田原」業務推進課長
民俗芸能しいては日本文化の活性を目指し中心市街地活性化事業に取り組んでいる。
元広告業界専門新聞編集長であったことから日本ペンクラブに所属。
現在、広報委員・獄中作家委員などに名を連ね活動している。
(社)鬼ごっこ協会会報などでコラムを担当
所属学会:民俗芸能学会・藝能学会・日本民俗芸能協会ほか

◯生年月日:1976年3月29日◯血液型:O型◯出身地:香川県◯学歴:実践女子大学大学院修士◯趣味:プロレス・格闘技観戦◯著作:『年中行事辞典』(東京堂出版)編集委員として、『メディアの将来像』(早稲田大学メディア文化研究所)共同執筆 ほか

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